護身術のHPを持ち、公演までするある女性が、何者かに惨殺される。心臓をナイフで貫かれて・・・
犯人は、その女性の生活や行動パターンを熟知し、EメールやHPをハックしたクラッカーであると判明。
市警は服役中のハッカー、ジレットに捜査の協力を要請。のっけからコンピュータ用語が所狭しと並び、5年前だったら半分以上理解できない内容。
ほぼ4分の3までで、ディーヴァー、小出しにどんでん返しを出す出す(笑)
ジレットのハッカーとしての優れた能力と、市警の担当刑事ビショップの刑事としての優秀さが相まって、文句なしに面白い。
本の中で犯人が使う「トラップドア」と言うハッキングプログラムは、ネットの危うさを警告している。
オンラインして居る人間のプライバシーは無い?多分このトラップドア存在していないんだろうけど、それも数年も要さずに、こういうプログラムは作られてしまいそう?
そしてそう思わせるディーヴァーの取材力、題材の研究は素晴らしい。この人一年置きにライムシリーズ、新作と出版してるけど、いったい何時取材してるのだろうか?
そしてディーヴァーの登場人物は、実に愛すべき人物が多い。主人公のジレットも、ズボンからいつもシャツをはみ出させている市警のビショップも、ライムやトム、サックスと同じように「次回作も見て見たい!」と思わせる描写。
そしてやはり今回も、犯人の内情にも同調できるくらいの、内因表現に脱帽。
こうじゃないと犯人はただの平板な「悪」でしかなく、作品の重さが違うように思う。
犯人が何故「青い虚空」(『the blue nowhere』は、電脳空間サイバースペースを意味するディーヴァーの造語)にのめり込んで行くようになったのか、どうやって他の人間にすんなりと成りすます技を磨いていったのか、細かい描写で納得できる。
もちろん、追い詰める側のジレットの心情や別れた妻との葛藤、担当刑事たちの細かい家庭事情なども。それだけ書いてもクドくならないのがさすがディーヴァー。