スティーヴン・キング好きの読書日記
戦慄の眠り〈上〉 戦慄の眠り〈上〉
グレッグ アイルズ (2004/04)
講談社
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ヴェトナム戦争で写真家の父を亡くしたジョーダン・グラス。
父と同じ写真家になった彼女には、一年半前に失踪した双子の妹ジェーンがいた。
写真集を出す予定で訪れた香港の美術館で、ある絵画を見た彼女は愕然とする。
「眠る女」と題された、一般的には「死体」を描いているとされるその作品には、それまで死亡したものと諦めてきた、自分とそっくりな妹が描かれていたのだ。
冒頭は説明が多すぎ?な展開で少しげんなりするが、彼女がFBIの捜査に加わると俄然スピードが増す。
本来なら被害者の家族が捜査に加わることなど皆無だと思うが、ジョーダンはジェーンに瓜二つの一卵性双生児。
一連の「眠る女」を描く画家が、連続失踪事件に関わっているとしたら、モデルにした女性にソックリのジョーダンは捜査の切り札になる、と当局は踏む。
育った家庭、早い父の死、双子の確執、とジョーダンを作る環境は複雑だが、彼女にはそれ以外にも多くの謎がある。
主人公のジョーダン・グラスは非常に魅力的な40歳の女性だ。強さが良い具合に表現されている。
冷静な観察力と裏腹に湧き出す激情も、女性ならでは、な感じで共感が持てる。

作中で問いかけられる3つの質問。
「あなたが過去にした最悪のことは何だ?」
「人生でもっとも誇りに思った瞬間はいつか?」
「あなたの人生に起きた最悪のことは何か?」
これは自分を見つめ返すようで、非常にイヤな質問だ。
私は最初の質問にしか答えが見つからなかった。
他の二つはこれから答えが見つかるだろうか?
なんにしても客観的に、なんのヴェールにも包まずに自分を見るのは時として残酷かもしれない。
ジョーダンはこの質問に直接は答えていないが、作品を読み進めるうちに、おのずと答えが見えてくる。
彼女の過酷なこれまでの人生がとても哀れだ。
しかし・・・
後半の、犯人の独白?めいた展開は「神の狩人」のブラフマンか、こいつは(笑)と思わせてくれる。
アイルズの書くサイコパスは饒舌なのが玉に瑕・・・
そして最後の最後でデウス・エキス・マキナ!ああ、その章は要らなかったのでは?
それまでの展開やジョーダンの苦悩は、読者の同情は、どうなっちゃうのさ・・。あまりにも都合よすぎじゃないのか?
ラスト20ページでこんなに萎えてしまうとは・・・それまでが良かっただけに、本当に惜しい。
ブラッククロス〈上〉 ブラッククロス〈上〉
グレッグ アイルズ (1998/01)
講談社
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軍事サスペンスもの。
ホロコーストということである程度の覚悟は必要だけれど・・やはりどんな内容でも誰が書いても、虐殺場面は眼を覆いたくなる。
ドイツが開発した毒ガス、サリン。それに対抗する毒ガスを持ち得ていなかった連合軍は、毒ガスを製造・研究している収容所を少数精鋭で攻撃することを計画するが、その計画が実行される直前にハインリヒ・ヒムラーの目前でサリンよりも強力な毒ガス、ソマンが完成してしまう。
異なった色の十字で区別される毒ガス。ソマンの弾頭には黒十字が刻まれた。
無差別に選ばれた囚人とユダヤ人を小部屋に詰め込み、数滴を気化したもので数秒間に全員を致死させるソマン。
絶望に苛まれ運ばれてきたユダヤ人たち。理不尽な死と虐待に耐え、彼らの眼には知性も残らない。
ヒムラーが独断で進めているガス攻撃を総督ヒトラーに認証させる為に行われる公開ソマン実験。

登場人物それぞれが行う「正義」と信じる行為。理由付けがなんとなく曖昧なものがあるけれど、一部の理由には強烈なものを感じてしまう。
ここで出てくる収容所は私が今まで読んだモノとは違って囚人をむやみに殺したりはしない。何故ならここは、囚人を開発した毒ガスの人体実験に使うため養っている場所。
しかし慰みに殺されないからと言って、収容された人間に何の希望がある?この問題はいつでも、今、自分が生きている意味を考えさせられてしまう・・・
後半の作戦開始からは怒涛の勢い。やはり定番とは言え「潜入、壊滅」は面白い。
そして結末がどうなるのか、囚人の登場人物は生きのびられるのか、それだけが気がかりで一気読みしてしまった。
時にもどかしい文があるのは本書が二作目だからか?
私個人としてはあまりにも綺麗過ぎる結末でリアルなモノが抜けてしまったような気がしてしまう。
でもこれだけの虐殺を書ききったら、どうしても最後に光を置いてしまうだろう。(ケッチャムなら絶望、キングなら混濁?)
逃げ延びた大多数の囚人の行く末が、現実を物語るのかもしれない。
24時間 24時間
グレッグ アイルズ (2001/09)
講談社
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完全な誘拐をする二人組み、ジョーとヒューイは誘拐の弱点「身代金の受け渡し」と「高額の要求」の盲点をつき、年に一回の誘拐を過去5回成功させている。
そして彼らは、麻酔医のウィル・ジェニングスと妻カレン、愛娘のアビーに魔の手を伸ばす。
彼らの計画は絶対。タイムスケジュールを曲げない。しかし今回は様子が違う・・・下調べの中にアビーの「小児糖尿病」がなかったのだ。
インスリン注射をしなければ、幼いアビーは身代金の受け渡しを待たずに死亡してしまう・・・

ヘンな批評かもしれないけど、アイルズはディーヴァー+(キング÷2)って感じ。展開の早さ、細かい描写、映像的文章。
制御しなかったら、朝まで読み続けられるほどの筆致。素晴らしく面白い。

ジョーたちの「完全な誘拐」の歯車が少しづつ狂いだして、これでもか!と言う早い展開。
小さな綻びが彼らの完全誘拐を揺るがす・・・犯人グループの一人一人が実に人間的で、とくにヒューイには心奪われる。
主犯のジョーは酷く捻じ曲がったバカで、親としては千切って殺したいけれども。
誘拐された少女アビーの優しい心と、逆襲するカレンとウィルが鍵となる。
ともかく現状を打破するためにあらゆるものを使い、知恵を絞り、犯人に立ち向かう姿が印象的。

たった一日で、これだけの状況が起こりうることにも驚愕に値する。
悪意に見初められると平和な生活はかくも無常に崩壊するものなのだ。
神の狩人〈上〉 神の狩人〈上〉
グレッグ アイルズ (1998/08)
講談社
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正体の見えないサイコな犯人の犯行が報道され、犠牲になった有名作家女性が会員となっていたネットワークのシスオペ、ハーパー・コールが業務規則を侵して警察に通報したことから、全米で起きている個々の殺人事件が一つに結ばれる。

犯人、コールそれぞれが一人称で書かれ、何を考えているか見えない犯人と、妻にさえ言えないある苦悩を抱くコールの細かな内面が良い対比になっている。
主人公のキャラが際立ってて展開も早く、そして分かりやすい。主人公以外の登場人物、FBIの精神科医レンズ博士、コールの友人で天才プログラマーのマイルズ・ターナー、コールの妻ドルーとその妹エリン、それぞれが生き生きしてる。
「作者の意図で動かしてるぞ」的キャラが居ないのがいい。この手の話を読みすぎてるからか、こういう意図で動かしてるだろ?とか読みが当たってしまう事もしばしばで、(あくまで)私の予想斜め上を行く展開にはシビレるのだ。

ただ一点、犯人がちょっと超然としてて鼻持ちならないのがヤな感じ?もうちょっとだけ弱い面が出ると尚グっとくるのだが・・・(注文多すぎ)

しかしラストの展開は目を見張るものがあった・・・あれを途中で止めて寝たり出来ないって!と言うくらい凄かった。
追いつ追われつの展開、言葉の応酬、罠、夫婦愛が巧妙に絡み合い、個人的には「ボーンコレクター」以来の傑作?

1000ページを二日で読破、読後に興奮状態で眠れない、なんていう読書が出来るって至福。
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Author:しゅう

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