あのハンニバル・レクター博士が始めて登場したトマス・ハリスのサイコスリラー。
私は順番どおりではなく、「羊たちの沈黙」「レッド・ドラゴン」「ハンニバル」の順で読んだのだが、「ハンニバル」とは違い「羊・・」と同じ手法で、サイコな犯人をFBI捜査官が追う形になっている。
「羊たちの沈黙」でレクター人気が出てしまったので、この「レッド・ドラゴン」もレクター一色だと思う方も多いとは思うのだが、本書ではレクターは前面には出てこない。
もちろんキーマンとはなっているが、あの異常性を前面には出して居らず、どちらかというと計り知れない怪物として描かれている。そしてこの当時からとても魅力的な存在。
「レッド・ドラゴン」はレクターではなく、サイコな犯人フランシス・ダラハイドとFBI捜査官ウィル・グレアムが主軸として書かれている。レクター抜きでも非っ常に面白い。
二家族が共通の犯人と思われる人物に惨殺され、レクター逮捕後FBIを退職していたウィル・グレアムは、FBI行動科学課長クロフォードに依頼をうけて捜査を開始。
でもサスペンスではないので、犯人は読者には初めから明かされている。この物語は犯人探しが主体ではなく、あくまでもウィルと、『ウィリアム・ブレイクの「大いなる赤き竜」』に見せられた男、フランシス・ダラハイドとの対比。
異常なほど映像的な記憶を持ち、犯人の気持ちを自分に同化できるウィル。しかし優しい彼は、「憎き犯人を追う自分」と「その犯人と同化できてしまう自分」に迷い悩み、精神まで病んでしまう過去が。
一方ダラハイドは、兎唇のため母親に捨ててられ、厳格な母方の祖母に育てられる。歪んだ愛情を持つ彼の心を大きく揺さぶったのは、ウィリアム・ブレイクの「大いなる赤き竜」。その絵を見たとたん、彼は自分が何をすべきか悟る・・・。
猟奇的な殺人を続けるダラハイドは、盲目の女性レバ・マクレーンと出会い「竜」の声に怯え始める。そして「竜」を抑えるために彼が取った行動とは?
異常性と繊細さを持つこのダラハイドが、怖いというより非常に悲しい存在になっている。