クーンツはキング、マキャモンに並ぶモダンホラー御三家の一人なんだけど、ラストの方向性が好きになれない。
謎に包まれた出だしは好調。不可思議な死の町を、年の離れた姉妹が彷徨う。綽く得体の知れない恐怖。
100ページくらいでやはりキングとの違いが顕著に現れてる。まずクーンツは人物の肉付けがあっさり気味。キングだったら主人公の姉妹のこれまでの生い立ちを、あと20Pは使ってただろうと思う。
それと一文の長さ。これはキングを読みづらい、と判断されることの一つでもあると思うんだけど、キングは一文が非常に長いのだ。
良く言えばクーンツは無駄な肉付けがなくて、スパッと小気味いい文体。
しかし・・キング慣れしていると、なんだか物足りないよと思ってしまう(笑)(まぁそれはどの作家でもキング作品の後に読めばそう思ってしまう・・)
キングの場合、人物は必然で登場してくるけれど、クーンツの場合のそれは偶然と言っても良いほどだ。
登場してくる旧知の人物(のように思わせる)と、著者の都合で新たにポッコリ現れる人物。どちらが良いとは言えないし、賛否もあるように思う。
キングはどうも自然に登場させる為の肉付けが多くて冗長だし、ストーリーが中だるみしてしまうのもそれが一因なところがある。
クーンツはその点思い入れなく登場する人物に後から多少の肉付けをするので、スピード感がある。
キングは現実世界に物語を持ち込む。クーンツは現実とは別に架空の物語を作る。
無人になった町で警察に助けを求めた姉妹。やがてやってきた警察官と共に町の状況を確かめてゆく一行は、むくみ、痣だらけの死体を多数発見する。
膨張しているのに腐臭はせず、恐怖の表情を浮かべる死体。
細菌?伝染病?なんらかの汚染?色々な説が個々の頭に浮かぶけれど、登場人物はみな「怪物」の名は口にしないものの、その人知を超えた存在を感知し始める。
一行をあざ笑うように教会の鐘を鳴らし、街頭を点滅させる「それ」。
「怪物」の存在を一切認めようとしない警官をなぶり殺しにする「それ」。
そしていつの間にか消えている死体、有得ない巨大な生物と、その残虐非道な摂食の仕方。
読み進むうちに今この瞬間、背後から襲われそうな恐怖をたんまりと味わえます。
救世主のように軍の細菌スペシャリスト隊が到着したのもつかの間、ファントムは音も無く忍び寄り隊の大部分を殺害。
骨すらも残らないその殺害方法。そしてファントムの正体を知る人物、ティモシー・フライトはロンドンから現場にやってこようとしている。
フライトは世界中で起こってきた集団殺人事件とファントムとを結び付けていた人物だった。
知能を持ち、町の人間を弄ぶように殺すファントム。コンピュータを使いファントムから人間にコンタクトを取るんだけど、まぁ何て言うかイヤラシイ生き物です。
私はどちらかと言うとこういう怪物は殺戮マシン系の方が怖いんだよね。人間はサイコの方が怖いけど。
意図も作意もなく、本能のままに惨殺して喰う。この方が怖い。
悲しいかな、終盤はデウスエキスマキナ的。
クーンツだから、ってことで結末は見えていたので、生き残るの誰?!って感じで読んでたんだけど、「ホラー・ハーレクインロマンス」ってだけあってヨミ通りの人物が生還。
そして・・・なんだこのラストの安っぽい救いは?!(これが一番憤るぞ)
それまでのファントムの「悪意」そのもののような振る舞いもなかったことになっちゃうような安っぽさ。
ファントムにもやたらと宗教的な「悪魔」を押し付けてるのも気になる。宗教はおいて置いて、純粋な「悪」を描き出して欲しかったなぁ・・・。
でもまぁそうなるとクーンツのクーンツたる意味が無くなってしまうわけで。
ついついキングならこの題材でこの倍は書くだろう、でもケッチャムならこの半分でもっと残酷この上ないだろう、とか考えてしまう。