9歳の少女が森で迷う、ただそれだけの設定です。それなのにこの面白さは・・・。
トリシアは、ママが毎週末強制的に連れて行く小旅行で、毎回言い争うママと兄ピートのやり取りにうんざりしている。
ママは最近離婚したばかりで、ピートはその為に転校した学校に馴染めずパパの所に帰りたい為、ママに食って掛かる。
ハイキングに出かけた今回も、言い争う彼ら。トリシアの存在すら忘れた様子で口論に夢中になっている。
おしっこに行きたくなったトリシアは彼らに声を掛けるが、まったく聞こえない様子。「もういいわよ」とハイキングコースを外れ一人森の中へ入って行き・・・・
ここからはただひたすら、森の中でのトリシアの彷徨が書かれている。
レッドソックスの大好きなリリーフピッチャー、トム・ゴードンを心の支えとし、時に勇敢に、時に臆病に彼女は彼女なりの奮闘を始める。
ただそれだけなんです。(本当です)でもトリシアの心の動きや状況が手にとるように分かり、ただそれだけなのに本当に面白い。
帯には「スタンド・バイ・ミー」を彷彿とさせる・・と言うような書き方がされていたけれど、私には「ジェラルドのゲーム」か「クージョ」の少女版のように思える。
極限での心理状態、人間の本能。ゾクゾクしますね。
最後までモンスター出現も超常現象も起こらず、単純な「森に女の子一人」の設定のまま終わる本書。
これだけでこんなに面白い作品が書けるなんて、さすがキング。
初めてキングを読むのならば、こういった本から入るのがお薦めです。読みやすいし、ちょうど中篇といった長さもいい。
ちょうど文庫化もされたことだし・・しかし表紙は前の方が良かった気がします(笑)