スティーヴン・キング好きの読書日記
セル 上巻 (1) (新潮文庫 キ 3-56)セル 上巻 (1) (新潮文庫 キ 3-56)
(2007/11)
スティーヴン・キング

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グラフィックノベル作家のクレイは、自身の作品の商談のためボストンへ来ていた。
彼はまとまった商談に気を良くして、自分へのご褒美にと立ち寄ったアイスクリームスタンドで、恐ろしい光景を目の当たりにする。
ボストンの街中で、携帯電話を使っていた全ての人々が突如、凶暴な野蛮人と化す。パルス。

怒涛の143ページ一気読みです。ワクワクしましたよ、もう。
携帯ゾンビだなんて毎度ながらあり得ないってばキング、と思いいつつ読み始めたのに、すっかり逃げ惑うクレイの気持ちに同化。

第2章に入り、たまたまクレイと同じ場所に居合わせたトム、その後一緒に同行するようになった少女アリスは、市街地へと非難する。
この辺りから怪しくなるのです・・

そう、どうしてもあの「ザ・スタンド」と比較してしまう自分を発見する。
あらゆる場所で、携帯狂人が生まれたのならば、そのあらゆる状況が知りたい。クレイ一行だけではなく、パルスが発生した経緯、クレイが案ずる息子や、アリスの父、アメリカの様々な場所にいる様々な人々がどうやって狂人から逃げ惑ったのかを、知りたくなる。キングが書くであろう、その細かな描写を読みたくなる。
でも、話はクレイを中心とした小さな集団の周りから離れない。
もちろん、分量は買った時点で分かっているので、「ザ・スタンド」のように細部まで語られないことは分かっている。でも、求めてしまうのですよ、あの収拾がつかなくなるほど、膨大に脹らんだ枝葉の物語を。
そこが分かってからは、冒頭の勢いはどこへやら、終盤はいい塩梅にまとまってしまった。(それこそ、あり得ないじゃん的な、デウスエクスマキナ)
冒頭が好みな成り行きだっただけに、とても残念。
成熟しちゃったのかなぁキング・・それとも私がいつまでも成長しないのかな(笑)
ウォッチメイカー ウォッチメイカー
ジェフリー・ディーヴァー (2007/10)
文藝春秋
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かなり久しぶりの更新です。
ケッチャムの「襲撃者の夜」以降、特に感想を書きたい本もなく、間が空いたところでPCクラッシュ。
ノートとデスクトップが立て続けだったので、もう精根尽き果てました。
チマチマ書き溜めてた記事もイっちゃったので、気力が失せちゃって・・・(笑)
そもそも、ちゃんとバックアップ取っておかなかった私が悪いんですが。

ケッチャム以降、キングはダークタワー一気読みに始まり、キャリーから順にコロラドキッドまで読破。
次にレクター物を順に読み、さらにリンカーン・ライムシリーズを順読み。(そして合間にワンピースで号泣(ヨホホー))
でもなんて言うんでしょうか、貧乏性なのかなぁ。こういった贅沢な読み方はイカンと思いましたね(笑)好きな作家の次の邦訳を待ち焦がれるのが、私に合うスタイルだと思い知った感じ。

そういう感じの約半年で、やっと最近新作を読みました。
ディーヴァーの「ウォッチメイカー」。
これはライムシリーズではボーンコレクターと同格の面白さです。
(まとめ終わったら感想更新します)
ディーヴァーのライム以外の翻訳も、来年刊行されるらしいので楽しみ。

そしてそろそろ本腰入れて積読も処理しなければ。うむ。
トム・ゴードンに恋した少女 トム・ゴードンに恋した少女
スティーヴン・キング (2007/05)
新潮社
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9歳の少女が森で迷う、ただそれだけの設定です。それなのにこの面白さは・・・。

トリシアは、ママが毎週末強制的に連れて行く小旅行で、毎回言い争うママと兄ピートのやり取りにうんざりしている。
ママは最近離婚したばかりで、ピートはその為に転校した学校に馴染めずパパの所に帰りたい為、ママに食って掛かる。
ハイキングに出かけた今回も、言い争う彼ら。トリシアの存在すら忘れた様子で口論に夢中になっている。
おしっこに行きたくなったトリシアは彼らに声を掛けるが、まったく聞こえない様子。「もういいわよ」とハイキングコースを外れ一人森の中へ入って行き・・・・
ここからはただひたすら、森の中でのトリシアの彷徨が書かれている。
レッドソックスの大好きなリリーフピッチャー、トム・ゴードンを心の支えとし、時に勇敢に、時に臆病に彼女は彼女なりの奮闘を始める。
ただそれだけなんです。(本当です)でもトリシアの心の動きや状況が手にとるように分かり、ただそれだけなのに本当に面白い。

帯には「スタンド・バイ・ミー」を彷彿とさせる・・と言うような書き方がされていたけれど、私には「ジェラルドのゲーム」か「クージョ」の少女版のように思える。
極限での心理状態、人間の本能。ゾクゾクしますね。
最後までモンスター出現も超常現象も起こらず、単純な「森に女の子一人」の設定のまま終わる本書。
これだけでこんなに面白い作品が書けるなんて、さすがキング。

初めてキングを読むのならば、こういった本から入るのがお薦めです。読みやすいし、ちょうど中篇といった長さもいい。
ちょうど文庫化もされたことだし・・しかし表紙は前の方が良かった気がします(笑)
骨の袋〈下〉 骨の袋〈下〉
スティーヴン キング (2003/08)
新潮社
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30代半ばの作家マイクの妻ジョアンアは、ドラッグストアの駐車場で突然倒れた。悲しみに暮れるマイクは妻の最後の買い物の中から妊娠検査薬を発見する。
彼らの間には子供がなく、司法解剖で妻が妊娠していたことが発覚する。更なる悲しみに暮れるマイクは疑問も持ち始める・・どうしてジョアンナは一言もそれについて話さなかったのか??
妻の死後4年経っても、執筆出来ないマイクは、妻との思い出が詰まる別荘「セーララフス(セーラは笑う)」へ行く決心をする。

本書では作中なんども、ダフネ・デュ・モーリアの「レベッカ」の一文が繰り返される。

「昨夜私はまたマンダレイへ行った夢を見た」
この「レベッカ」は、イギリスの有名な貴族マクシミリアン・デ・ウィンターのもとへ後妻に入った「わたし」が、彼の所有する邸宅「マンダレイ」でそこかしこで感じる溺死した前妻「レベッカ」の影に付きまとわれる、繊細で女性らしい心理を巧妙に書いた名作。意味深です。
レベッカといえば、その中に私の好きな文がある。

「幸福というものは、あがなうことのできる持物ではなくて、一つの思考の性質であり、心の状態である」そう、しあわせってこういうことなんだよね。

骨の袋とは物語中に出てく登場人物のことだとキングは言う。現実の人間と比べると、小説の人物は所詮骨の袋だ、と。

霊的な描写満載なのに、読後は意外に爽やか。普通なら引いちゃうくらい霊的現象がてんこ盛りだけれど、そこはさすがキング、ぐいぐい読ませる。
ただ文字を追っているだけなのに、これほどまでにまざまざと情景が頭に浮かぶ文章を書けるのって凄い。
私にはマイクの顔も、セーララフスも、幼いカイラの愛らしさも手に取るように分かる気がする。
それが私のキング好きたる所以なのかも。
襲撃者の夜 襲撃者の夜
ジャック・ケッチャム (2007/05)
扶桑社
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あの衝撃の事件から11年。警官を引退したピーターズは、早朝にある事件が起こったことで警察から助言を求められる。
二人の女性が惨殺された。そして死体の一部と一緒に居たはずの赤ん坊も、持ち去られていた。11年前の「彼ら」の生き残りが起こしたと思われる事件。
あの時、混乱した現場で、被害者を「彼ら」と勘違いし射殺していたピーターズは、あの忌まわしい現場へ他の警官を引き連れてゆく。

「オフシーズン」の続編は、ある女性が帰宅しベビーシッターが惨殺された現場を眼にしたところから始まる。
いつものケッチャムのように、彼女が生と死の狭間でもがく事すらも許さない。彼女の意識と命はあっという間に断ち切られる。
序幕の場面で、女性と赤ん坊、そして老いた元警官が出てくるとなると、今回の標的はコレか、と。不安と期待入り混じります。
中心となる人物は、ディヴィット、エミリー夫妻とその赤ん坊のメリッサ、エミリーの友人のクレアとその息子ルーク。
クレアは離婚した元夫スティーヴンとの間に問題があり、ルークは両親の離婚に対してどこにもぶつけられない怒りを抱えている。
エミリーのもとへ身を寄せたクレアに、会いにこようとするスティーヴン・・暴力的な彼の訪問は不穏の影を投げかけるが、それは「彼ら」に襲撃されるとたちまち霧散してしまった。周到な恐るべき襲撃によって。

中盤から、これは「オフシーズン」と同じモノではないのだ、と気づかされる。描写は脚の付け根がムズムズするほどリアルだし、「彼ら」のリーダーである「ウーマン」(彼女が前回の事件の生き残り)の野生的な強さと、善悪の無い本能的な感情に圧倒されるけれど・・でも「オフシーズン」とは違う。
標的となったエミリーとクレアが、強いのだ。肉体的にではなく、精神的に。母は強し、とはよく言ったもんだ。
だから、展開にいつもの現実感がなくなっているような気がする。生き残る過程に不自然さがあるなんて、ケッチャムらしくない。
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Author:しゅう

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